女神イシス、またはネフティス”

■解説
女神イシスは、古代エジプトのオシリス神(注1)の妻。女神ネフティスは、イシスの妹にあたり、死者を守る神。イシスは、頭上に玉座または日輪と牛の角をのせる姿、ネフティスはヒエログリフ(象形文字)を頭上にのせる姿であらわされます。 大原美術館のこの作品は、残念ながら頭の上の部分が失われているため、どちらかを断定することができません。
この作品は、プトレマイオス期(紀元前304年-紀元前30年)に制作されたと推定されています。 プトレマイオス朝は、マケドニア王であるアレクサンドロス大王の遠征の後、その将軍の1人によってつくられた王朝。古くからのエジプト美術と、ギリシア美術がまざりあった美術が特色です。
女性の襟元、足首、足元の台座に見られる細かい文様には、エジプト装飾の伝統のなごりが見られます。 その一方で、この女性頭部のやわらかな肉付け、どことなく沈んだ表情にはギリシア美術の特徴の人間らしさが感じられます。
かつて、この作品には、金や多くの色を使って、装飾がほどこされていました。 現在はその多くが落ちてしまっているものの、残ったわずかな着色から、昔の華麗な姿を想像することもできるのではないでしょうか。


注1:オシリス神:穀物神、死・復活の神、冥界の王、ナイルの洪水の神(新潮世界美術辞典による)。
(参考文献)
「新潮世界美術辞典」 (新潮社) 1985年

■エピソード
児島虎次郎は、古代の美術について、学生時代の大原總一郎に、
「人間は進歩するものではない。エジプトや中国の古代文化は全く驚嘆すべきものであって、それ以来人間はあれだけのものを造ったことがない。むしろ退化の歴史でしかない。」
と語ったそうです。そして児島は、西洋の近代美術だけでなく、中国やエジプトの古代美術品収集にも熱心に取り組みました。
虎次郎は3度目のヨーロッパへの行き帰りにエジプトに立ち寄り、多くの古美術を収集しました。この作品もエジプトで購入したうちのひとつです。
この女性像は右手をあげ顔を半分隠すような形をしています。これは、泣いている姿、つまり悲しみを表していると言われています。


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