ル・シダネル

夕暮れの小卓

■解説
アンリ・ル・シダネル(1862-1939)は、インド洋モーリシャス島生まれのフランスの画家です。 パリに出て修行したのち、1887年から定期的にサロンに出品するようになりました。スーラに代表されるような新印象派風の点描で、風景や室内、静物を多く描きました。 原色を避けた、落ちついた色調を多く用い、その作品は独特の哀愁に満ちた静けさをたたえています。
この「夕暮の小卓」は、運河に面した町の夕暮の一情景を描いた作品で、ル・シダネルが非常に感銘を受けたベルギーの古都ブルージュを連想させる風景です。 画面前方の食器が残されたテーブル、後方の明かりのともった窓が、暗喩的な情緒をかもし出しています。

■エピソード
ある日、女子高校の生徒20~30人が、女性の教師に連れられて大原美術館を訪れました。
「今日は、この中でひとつだけでいいから好きな絵を見つけてください。そして、その絵でなにか物語を作ってみてください。物語ができたら教えてね。」
引率の先生が、生徒たちにつげました。そこで生徒たちは、みな思い思いの絵の前に行き、一生懸命絵をながめ、物語を考えました。
ル・シダネルの「夕暮の小卓」の前でじっと絵をみていた生徒が、こんな物語を披露してくれました。
「ふたりの若い恋人たちが、テラスでおしゃべりに夢中になっていました。ふと気が付くとあたりは暗くなり、お腹もすいていました。 今、ふたりは、画面左上の建物の明かりの下で暖かいスープを飲んでいます。」
素敵な物語だと思いませんか? 先生は、美術館では絵をみるだけでなく、こんな風に絵から物語を引き出すこともできる、ということを生徒たちに伝えたかったのではないでしょうか。
皆さんも好きな絵の前で、自分だけの物語を作ってみてはいかがでしょうか。




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